宇都宮市立南図書館サザンクロスホール
● 小津安二郎の代表作。2年前に鹿沼市民文化センターの名作映画会で初めて見た。今回が2回目。
● 主催者のホームページでの紹介には「年老いた両親の一世一代の東京旅行を通じて,家族の絆,夫婦と子供,老いと死,人間の一生,それらを冷徹な視線で描いた作品」とある。
子供たちのわがまま,未熟さ,ゲンキンさに対して,老夫婦の達観,あきらめ,忍耐を対比。そこに原節子が天使の役で老夫婦を支える。
間に当時の風俗や生活の様をきめ細かく埋めこむ。もちろん,ここで描かれているのは,当時のかなりアッパーな都会の暮らしだと思う。農村や田舎(当時の日本の大部分)ではとてもこんな華やかな生活はなかったはずだ。
以上が2年前に見たときの感想。
● で,今回は宇都宮市立南図書館で映写会があるというので出かけていった。無料。上映は午前10時から。
DVDにもなっているんだろうから,レンタルショップで借りてくれば,いつでも見られるはず。なんだけど,DVDを借りて自宅で見ることはあまりしない。レンタルショップまで行くのが面倒だから。というと,南図書館の方がはるかに遠いので,それはなぜ面倒じゃないのかっていう説明ができなくなるから困るんだけど。
ま,人の気配があるところでひとりで見たいから,ってことにしておきたい。
● 東京のアイコンとして煙を吐きだす工場の煙突が使われる。尾道のアイコンはポンポン汽船とボンネットバス。そして,両者をつなぐのが汽車。
● 原節子の役は,老夫婦の戦死した息子の嫁。戦死して8年が経つのに,再婚しないで嫁として老夫婦に接する。東京の安アパートに一人で暮らしているんだけど,言葉遣いはすっごいセレブ。
考えてみると不自然なんだけど,元々は良家のお嬢さんだったという設定なんだろうか。原節子が演じると,当然ながら不自然さが表に出てくることはない。
● 淡々と描いている。子供たちの身勝手さを描きながらも,それを責めるわけではない。そういうものだ,そうせざるを得ないものだ,と認めているようだ。末尾で原節子にそう語らせている。
ストーリーはシビアなのに,見終えたあとに頭に荷物を載せられたような感じは味わわなくてすむ。
● っていうか,子供たちはできることはやっている。それでもなお,親の心の琴線をはずすんですね。ほんのちょっとした出来事が結果を分ける。
その「ほんのちょっとした」ことを自分の管理下に置くことは難しい。それゆえ,この世はままならぬというわけなのでしょう。