宇都宮市立東図書館 2階集会室
● 1949年のイギリス映画。監督はヒッチコック。ヒッチコック作品の中では「サスペンス色が薄い」らしい。上映前にスタッフの説明があった。
● 舞台はオーストラリアのシドニー。シドニーでは成功している人に対しても,前歴を訊いてはいけないとされていた。なぜなら,たいていの場合,刑務所にいたからだ。
イギリスから犯罪者が大量に送られてきた。彼らがオーストラリア開発に果たした役割は,実際も小さくはなかったのだろう。
● 主演はイングリッド・バーグマン扮するヘンリエッタと,彼女の夫であるフラスキー(ジョゼフ・コットン)といっていいだろう。ジョゼフ・コットンの演技は重厚で,印象に残った。
しかし,それ以上にフラスキー家のメイド(ミリー)を演じたマーガレット・レイトンの存在感がすごい。ミリーの存在がヒッチコック的サスペンスの趣を湛えている。
● ヘンリエッタを励まし,元気づける役割のアデア(マイケル・ワイルディング)も重要な役どころだけれども,トリックスター的な役回りか。
ヘンリエッタとフラスキーに割って入ることはできない。夫婦にしかわからない修羅場があった。
リチャード総督(セシル・パーカー)もいい味,とぼけたところのある善人,を醸している。
● この映画については,ぼくでも知っていたエピソードがある。「イングリッド,たかが映画じゃないか」とヒッチコックがイングリッド・バーグマンに語ったというエピソード。
なにしろ,超ロングのショットがある。俳優には過酷に過ぎる。納得できないバーグマンは,「ヒッチコックを質問攻めにした」。
ところが,ヒッチコックは「議論嫌い」。そこで,「イングリッド,たかが映画じゃないか」と。
● 面白いエピソードだと思うんだけど,ヒッチコック,ちょっとずるいよね。今だと,説明責任を果たしていないと言われそうだな。
が,ずるいけれども,彼の気持ちはかなりよくわかる。
● この映画のタイトルの由来は何なのだろう。山羊座って。星座だよね。誕生日を支配する星座のことだろう。
ヘンリエッタかフラスキーの誕生日なのか。それとも,二人が駈け落ちを決行した日? 追ってきたヘンリエッタの兄を殺してしまった日?
今頃になって気になってきた。