2017年11月21日火曜日

2017.11.17 宇都宮市立視聴覚ライブラリー 20世紀名画座 「見知らぬ乗客」

宇都宮市立東図書館 2階集会室

● 1951年制作のアメリカ映画。原作があるらしい。パトリシア・ハイスミスの同名小説。それをヒッチコックが映画化した。

● のっけからクライマックス。同じ列車に乗り合わせた大金持ちの御曹司ブルーノ(ロバート・ウォーカー)が,テニス選手のガイ(ファーリー・グレンジャー)に“交換殺人”を持ちかける。
 自分の父親を殺してくれれば,君が離婚したがっているミリアム(ケイシー・ロジャース)をぼくが殺してあげるよ,そうすれば君は付き合っているアン(ルース・ローマン)と結婚できるじゃないか,と。お互いに殺す動機がないことになるだろ,だから捕まる心配もないよ,と。
 ブルーノの話の進め方が強引であり,スリリングでもあり。

● ガイはもちろん相手にしない。さっさと話を終わらせようとして,それはいい考えだね,と言ってしまう。
 ブルーノは言質を取ったと思ったわけではないんだろうけど(つまり,ガイが「それはいい考えだね」と言わなくても,同じ行動を取ったと思うんだが),ブルーノはガイに話すこともなく,ミリアムを殺してしまう。

● ここから最後まで佳境が続くといってもいい。息つく暇もない。
 ガイが裏切ると読んで,父親のベッドでガイを待ちかまえていたブルーノ。ブルーノがガイのライターを下水に落とすところ。メリーゴーランドが高速回転を始めてブルーノとガイがライターをめぐって格闘するシーン。息を引き取る間際のブルーノの演技。

● 最後はハッピーエンドといっていいんだろう。ガイは疑いを晴らすことができたんだから。ヒッチコックにしては珍しいんじゃなかろうか,結末をハッキリさせているのは。
 しかし,見終えた時点でグッタリと疲れていた。

● 結末はハッキリしているんだから,このあとどうなるのだろうと想像する楽しみはない。けれども,ブルーノは結局何がしたかったのだろうという疑問が残される。
 もし,ガイが交換殺人に応じていたら,ブルーノはガイを追い詰めるような行動に出ることはなかったんだろうか。それとも,最初からガイをなぶることが目的だったんだろうか。だとしたら,理由はなに?
 というわけで,ブルーノの造形が印象的な映画。

2017.11.17 宇都宮市立視聴覚ライブラリー 日本映画劇場 「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」

宇都宮市立東図書館 2階集会室

● 1935年(昭和10年)公開。監督は山中貞雄。もっとも,Wikipediaによると「山中作品のうち現存する3作品の中で最も古いものであるが,残っているのは戦後公開版で,どこまでがオリジナルであるかは定かでない部分もあり,GHQによる検閲でチャンバラの場面などが削除されたと見られている」とのことだ。

● コミカルな娯楽映画。映画というのはどんなにシリアスなものであっても,どこかに娯楽の要素が入りこむものだろうけれども,これは肩肘はらないで見られる娯楽映画だ。
 大雑把にいえば,“こけ猿の壺”をめぐるドタバタ劇ということになる。丹下左膳(大河内傳次郎)とお藤(喜代三)の夫婦(内縁の夫婦ってやつ)のやり取り,そこに江戸へ婿養子に入った柳生対馬守の弟,源三郎が絡んでくる。
 さらに,孤児になったちょび安(宗春太郎)という子役が出てくるんだから,娯楽映画としては鉄板だ。

● 昔の映画だからね,登場人物がみんな可愛いんだわ。
 っていうか,ぼくらは(ぼくらの親の世代になるのか)こういう登場人物を見て大きくなったわけだから,知らず知らず,登場人物たちを内化しようとしてきたのかもしれない。彼ら彼女らのようになるのが,大人になるってことなんだな,と。