● 見たいと思っていながら見損ねた映画が,最近2つある。ひとつは「聖の青春」で,もうひとつが「この世界の片隅に」だ。
DVDになるのを待つかと思っていたところ,「この世界の片隅に」が高根沢町町民ホールで上映されるという。
見ることができた。よかった。
● 舞台は,太平洋戦争末期の広島県呉市。となると,内容は推測できるよと思う人がいるかもしれないんだけど,たぶんその推測とは違っている。戦争の悲惨さ,原爆の凄惨さを訴えたいというのが,第一義ではない。
この映画のサイトに監督・脚本を担当した片渕須直さんが次のような文章を載せている。
『この世界の片隅に』は,戦争が対極にあるので,毎日の生活を平然と送ることのすばらしさが浮き上がってくる。「日常生活」が色濃く見える。ふつうの日常生活を営むことが切実な愛しさで眺められる。これはたしかに自分がチャレンジしてみるべき作品だと強く思いました。● 映画の始まり近くと終わり近くに登場する2人の少女。始めに出てくるのは,すずさんだけに見えた座敷童,終わりに登場するのは,原爆症で母親を亡くした孤児の女の子。
この2人が同じ顔だったような。何かの隠喩かなと考えてしまう。でも,それはないんだろうな。
● ちょっとしか登場しないけど,遊女のリンも魅力的なキャラクターだ。というか,このアニメ映画には魅力的なキャラクターしか登場しない。
幼くして亡くなる晴美もその母親の径子も。すずさんの夫の周作も嫁ぎ先の舅や姑も。
● 最大の功労者はすずさんの声を担当した “のん” ってことになりますか。コトリンゴの音楽にも注目。
● すずさんの幼なじみで海軍兵になっている水原哲に対して,すずさんが見せる気安さに対して,夫の周作が嫉妬する場面がある。
夫には見せることのない別の顔を持たない妻なんて,一人もいないだろう。夫婦という関係になると(昔の “囲う” という関係も同じだと思うが),自動的にそういう盲点が発生する。だから,それは嫉妬の対象にしなくてもいいんだけどね。
ただし,原作はこのあたりの関係がもうちょっと入り組んだ設定になっているらしい。
● 同じ原作がTV(日テレ)ドラマにもなっている。タイトルも同じ。役柄の設定は映画とまったく同じというわけではないらしいんだけど(そりゃ,当然だね)。
2011年の8月5日に放送された。北川景子主演。残念ながら,ぼくは見損ねている。