宇都宮市立東図書館 2階集会室
● 1951年のアメリカ映画。監督はヘンリー・ハサウェイ。
第二次大戦で連合軍から「砂漠の鬼将軍」と怖れられた,ドイツのエルヴィン・ロンメルを描く。が,彼の戦場での活躍が描かれるのではなく,彼の悲劇に至るまでの経過がたどられる。
その悲劇というのは,ヒトラー暗殺の嫌疑をかけられて反逆罪に問われ,自殺に追い込まれたこと。これは史実らしい。ただし,ロンメルが本当にヒトラー暗殺に荷担したかどうかは不明。
● ロンメルは当時としては珍しく,貴族ではなく平民というか中産階級から,元帥にまで昇りつめた人物。その過程で,ヒトラーの信頼を受け,ロンメルもまたヒトラーを崇拝していたらしいのだが。
敗戦が濃厚になると,戦力も消耗しているし,有能な下士官も不足する。戦略の幅が限られるのだろう。これが進めば降伏する以外の選択肢がなくなる。
そうなると,支配者の足下は震度7くらいの揺れが恒常的に続くことになる。ロンメルもまたヒトラーを除いて降伏する以外にないと考えたのかもしれない。
● ロンメルを演じたのはジェームズ・メイソン。当時のアメリカではこれが最も好かれる英雄のキャラクターだったのだろうか。
ひと言で言うと,陰影がない人物に描かれている。一本気であり,単純であり,直情径行であり,裏表がない。要するに,懐が浅い。簡単に騙せそうな人物だ。
これでほんとに,敵の裏をかくような作戦を敢行できたんだろうかと思う。というわけで,少し物足りなさが残った。
● ヒトラー(ルーサー・アドラー)は逆に戯画化されすぎていて,かわいそうな気がした。ここまでお粗末だったわけではないだろうに。
宇都宮市立東図書館 2階集会室
● 火野葦平の原作を田坂具隆が映画化したもの。公開は1939(昭和14)年。この時期に戦争映画というと,戦意高揚のためかとまず思うんだけど,たぶん,田坂氏にその意図はないだろう。この時期はまだ,そんな必要に乏しかったのかもしれない。
内容も戦意高揚というには,静かなものだ。人情家の玉井伍長を小杉勇が演じた。
● 2部に分かれていて,合わせて2時間の長い映画。もし,自宅でDVDを見ていたら,途中で止めたかもしれない。
第1部は,ひたすら行軍。その様子で埋め尽くされている。兵隊さんの仕事は徒歩で移動することかと思う。
雨やぬかるみの中を,生活用具一式と武器を背負って(あるいは手に持って)延々と歩く。
● 途中で病気になって脱落する兵士も出る。野戦病院の描写もある。当然ながら,現代の病院をイメージしてはいけない。ベッドもないし,わずかな医師はいるものの,女性の看護師なんかいやしない。
野戦病院とは,地面に寝て休める休憩所のことだと思えばいいようだ。
● 大人数のエキストラ。これだけ贅沢にエキストラを使えるっていうのは,人間の値段が安かったんだろうな。今,これをやったらかなりの予算を要することになるのじゃないか。
● 第2部は戦闘シーンがメイン。相手は中国のゲリラ軍だろうか。トーチカから機関銃を撃ってくる。粗末な火器で戦うんだから,いきおい肉弾戦になる。
ジリジリと敵のトーチカに近づいて,手榴弾を投げる。後ろから,援護射撃があるんだけど,これ,味方を殺すことはなかったんだろうか。オウンゴールがけっこうあったような気がするんだが。
● 敵を撃退して束の間の酒に酔う部隊に,次の命令が降る。また行軍だ。そこで映画は終わる。
何が起こるわけでもない。静かな重厚感とでもいうものが全編を覆っている。