宇都宮市立東図書館 2階集会室
● 火野葦平の原作を田坂具隆が映画化したもの。公開は1939(昭和14)年。この時期に戦争映画というと,戦意高揚のためかとまず思うんだけど,たぶん,田坂氏にその意図はないだろう。この時期はまだ,そんな必要に乏しかったのかもしれない。
内容も戦意高揚というには,静かなものだ。人情家の玉井伍長を小杉勇が演じた。
● 2部に分かれていて,合わせて2時間の長い映画。もし,自宅でDVDを見ていたら,途中で止めたかもしれない。
第1部は,ひたすら行軍。その様子で埋め尽くされている。兵隊さんの仕事は徒歩で移動することかと思う。
雨やぬかるみの中を,生活用具一式と武器を背負って(あるいは手に持って)延々と歩く。
● 途中で病気になって脱落する兵士も出る。野戦病院の描写もある。当然ながら,現代の病院をイメージしてはいけない。ベッドもないし,わずかな医師はいるものの,女性の看護師なんかいやしない。
野戦病院とは,地面に寝て休める休憩所のことだと思えばいいようだ。
● 大人数のエキストラ。これだけ贅沢にエキストラを使えるっていうのは,人間の値段が安かったんだろうな。今,これをやったらかなりの予算を要することになるのじゃないか。
● 第2部は戦闘シーンがメイン。相手は中国のゲリラ軍だろうか。トーチカから機関銃を撃ってくる。粗末な火器で戦うんだから,いきおい肉弾戦になる。
ジリジリと敵のトーチカに近づいて,手榴弾を投げる。後ろから,援護射撃があるんだけど,これ,味方を殺すことはなかったんだろうか。オウンゴールがけっこうあったような気がするんだが。
● 敵を撃退して束の間の酒に酔う部隊に,次の命令が降る。また行軍だ。そこで映画は終わる。
何が起こるわけでもない。静かな重厚感とでもいうものが全編を覆っている。