洋画がヒッチコックなら,邦画は小津安二郎。小津作品もぜんぶ見たいもの。こちらも急がずゆっくりと。
● 小津作品には欠かせない笠智衆が父の堀川周平を演じ,息子・良平に若き佐野周二。が,その少年時代を演じた津田晴彦が,子どもの健気さを演じて秀逸。この人,このあとどうなったのだろう。子役で終わったんだろうか。
● 2つ感じるところがあった。ひとつは,自分は息子にここまでの愛情を注いだろうか,ということ。否。はっきりと否。
息子が幼かった頃の彼に対する自分の振る舞いを思いだして,息が苦しくなるような思いがした。自分はダメだった。じつに父親失格だった。堀川周平の1割ほどでも息子を思ってやっていれば。
● もうひとつは,どんなに素晴らしい親でも子供に迷惑をかけないでいることはできないのだ,ということ。子供はどうしたって親の犠牲になるものなのだ。
その子が親になってもまた同じことを繰り返さざるを得ないのだ。それでも子供は育っていくのだ。
● アマゾンを見たら,「小津安二郎大全集」が1,833円で販売されていた。「東京物語」など代表作が9つ収められている(「父ありき」も入っている)。1作あたり200円。これほどのものがこの値段で買えて,自宅で見れる。
いやはや,恐ろしいというかありがたいというか,とんでもない時代になったものだ。この映画が上映された当時は,映画なるものは都市部の上流階級の人たちの娯楽だったはずだ。
今現在,ぼくらにはできなくて,上流階級にのみできる娯楽って何かあるんだろうか。あるんだろうけど,それが何なのか,ぼくにはわからない。