2019年9月21日土曜日

2019.09.21 人間失格 太宰治と3人の女たち

TOHO CINEMAS 宇都宮

● 「人間失格 太宰治と3人の女たち」が13日に上映開始。注目は二階堂ふみだ。彼女が演じているであろう“狂気”に気圧されたい。
 じつは,13日のレイトショーで見ちゃおうかと思ってたんだけど。仕事帰りに寄るならいいんだけど,いったん帰宅しちゃうと出かけるのは億劫になる。60翁のことゆえ,許してたもう。

● で,今日見てきた。宮沢りえ(津島美知子)の抑えた演技も迫力があったけれど,二階堂ふみ(山崎富栄)の天然なのかと思わせるほどの没入感のある演技が,やはり第一の見どころかと思った。
 これだけの女優陣を相手に,主演の小栗旬も一歩も引かぬ健闘。

● 蜷川実花が監督すればこういう映像になるだろうなと思える箇所がいくつもあったのだが,観客が蜷川実花ならこうするだろうなと思うところを先取りして,リクエストにお応えしたということかもしれない。

● 沢尻エリカの太田静子だけがノーテンキというか抜けてる感じがあって,シリアスな宮沢りえと二階堂ふみの重さを中和している。自身も作家で,経済的に小栗旬の主人公に完全依存しなくてすむという事情もあるのかもしれない。
 トリックスターというのとは違うけれども,沢尻エリカもいないと困る。

● この映画で思うことは,男対女ということだ。圧倒的に女が強い。女に覚悟を決められたら男は太刀打ちできない。10代の男女もそうだし,50代も男女も同じだ。
 この映画でも,太宰と山崎富栄が入水自殺したのは,太宰の意思ではなく富栄が引かなかったからであることが描かれる。太宰が,今日じゃなくてもいいじゃないか,後にしよう,いや生きよう,と言うのに対して,富栄は「生きなくていいです」と決然と返す。太宰は抵抗できない。

● この男女差がどこに淵源するかといえば,おそらく,相手のために自分を殺せる度合いが,男よりも女の方がずっと大きいところにある。
 自分を殺せるのは弱さではない。強いから殺せる。これはもうどうしようもない。神様が男女をそういうふうに作ったのだと考えるしかない。
 小心者(男)は女に覚悟を決めさせるような状況を招来してはいけない。太宰のようになるぞ。