原作を変えている部分も多いようなのだが,映像化するのは難しいのだろうな,たぶん。
● 「高貴で不吉な血を持って生まれ,女たちに愉楽を与えながら命を燃やし尽くして散っていく男たち」を輩出する家系がある。早死にを宿命づけられた家系に生まれた若い男たちを,彼らのに誕生に立ち会った産婆のオリュウノオバ(寺島しのぶ)が見守る。
オリュウノオバの夫(佐野史郎)は僧侶。生と死の祭司が夫婦という,考えようによってはふざけた設定になっている。
● 命を燃やし尽くすのは勝手だけれども,どうにもはた迷惑な男たちなんだな,これが。しかも,現代では共感を呼びにくいかもしれない。
“草食男子” はすでに死語になるくらい,ずいぶん前に生まれた言葉だ。「女たちに愉楽を与え」るというのが,あまり男たちに訴えて来ない時代になっているような気がする。
セックスもAIロボットで満たせる時代がすぐそこまで来ている。男たちの多くは地に足がついていないから,生とか本物とかにはこだわらない。AIロボットで何の問題もあるまいよ。
● というわけなので,家系のおどろおどろしさ,そのことによって苦しむ当事者たちの苦難が,どうもうまく伝わってこない。単なるファンタジーのように思えた。
ファンタジーにしては少々重いな,と。現実離れしているな,と。原作で描かれた時代はずいぶんと昔なのだが。
● 若い男たちを演じるのは,高良健吾,高岡蒼佑,染谷将太の3人。男たちに関わる女たちを演じるのは,石橋杏奈,安部智凛,片山瞳,月船さらら。
他に,井浦新,山本太郎,水上竜士,岩間天嗣ら。
● 主題歌は中村瑞希&ハシケン「うたかたのうつしよに」。劇場公開は2013年3月。