2021年12月4日土曜日

2021.12.03 弥生,三月 君を愛した30年

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● 「弥生,三月 君を愛した30年」(2020年)。「1986年(昭和61年)から2020年(令和2年)までの34年間の3月のある1日を舞台に昭和,平成,令和という3つの時代を跨ぎ,運命に翻弄されながらも一途に互いを愛し続けてきた2人の男女の半生を描く」(ウィキペディア)。
 3月のある1日となれば,2011年3月11日の東日本大震災がストーリー展開上のターニングポイント(の1つ)を作ることになる。

● 東日本大震災のあと,これだけの自然災害を経験すれば,日本も日本人も変わらざるを得ない,と言う識者もいたし,新聞もだいぶそっち方面の記事を流した。が,結局,ぼくらは何も変わらなかった。
 わずか数時間であれだけの人命(18,425人)が失われたのに,イジメはやまないし,わが子を虐待する親もなくならない。特殊詐欺も隆盛を保っている。
 なくても誰も困らない仕事も営々と続けられている。読むに値しないパルプ本を次々に出版しながら,本が売れなくなったと嘆く出版界。作られるそばからゴミステーション行きになる,雑貨と称される商品群。人の迷惑を顧みない訪問販売またはその勧誘。企業が故意にかけてくる迷惑電話。

● いや,そういうことは,とりあえずどうでもいい。
 主演は波瑠(弥生)と成田凌(サンタ:山田太郎 → 山太 → サンタ)。2人は高校の同級生。もうひとり,杉咲花が演じるサクラも仲間だったが,彼女は早逝してしまう。
 しかし,2人が結婚するときに聞いてくれと残したサクラのボイスメッセージが,何というのか絶品。内容はスタッフが作っているのだから,杉咲花には関係ないのだが,声がもうすごいよ。
 上手いという以前の話。いい声なんですよ。生まれる前,母親の子宮の中で羊水に身を任せていたときはこんな感じだったか,と思わせるような。全身を愛撫されてるようなゾクゾク感をくすぐる声というか。

● もうひとつの印象的なシーンは,結婚している弥生がサンタ(この時点でバツイチ)のアパートに泊まって,翌朝,夫に電話をする。その電話を受けた夫(小澤征悦)の表情だ。
 どういう表情を作ればいいのか,かなり難しかったのではないか。高校時代の友だちと会ったので朝まで飲んだと言われたって,朝まで連絡できなかったわけではあるまい,と思う。しかし,彼女がそういうことをする人ではないと信じている。信じてはいるんだけれども・・・・・・という循環が止まらない。
 結局,すべてを察してそれを受け入れる表情を作ったのだが,うん,これしかないですかねぇ。

● 弥生とサンタは高校生のときからつながりを保っている。“好き” を保っている。
 しかし,こういう一筋の道を行く的な生き方は現実にはないものだろう。思春期を過ぎた後,人は何度か脱皮を繰り返す。過去を脱ぎ捨てる。3段ロケットよろしく,過去を切り離していく。

● そうでなければいけない。ぼくの周囲を見回しても,中学校の同級生同士で結婚した人はいない。高校の同級生と結婚した人は1人いるが離婚した。大学の同級生同士の結婚は複数ある。ただし,結婚したのは卒業してから数年の後だ。
 結婚は少なくとも1回は脱皮してからの方がよいとしたものだ。遅すぎる結婚はまだしも,早すぎる結婚はよろしくない。

● この映画で描かれているのはファンタジーであって,そのファンタジーを楽しめばよいものだ。
 自分も弥生やサンタのようにと考える若い人がいるとすれば(いないと思うが),目を瞑って1分間,深呼吸しようね,と言いたい。