宇都宮市立南図書館 サザンクロスホール
● 2017年に公開された。ただし,全国ロードショーというわけではなく,小規模公開にとどまった。ご当地映画的な感じですかね。 面白くない映画はないと思っている。どんな映画でも必ず面白い。
のだけれども,この映画はどうだったかというと,啓蒙映画あるいは教育映画のようで,お勉強させられたという感じ。
● 明治期,富岡に製糸工場を作ることになり,その最初期に女工(劇中では工女)として工場に入所した娘たちの話。
もちろん,フィクションを入れているはず。つまり,ルポルタージュではない。
きれいな話になっている。お国のため(この場合の国というのは,日本国というより江戸時代の藩に近い)に私たちは尽くします的な。
● といっても,この映画の主人公・和田英は実在した人で,彼女が残した『富岡日記』を映画化したもの。何から何までフィクションというわけではない。
『富岡日記』はちくま文庫で読めるらしいのだが,ぼくは読んでいない。読んでいない以上,このあたりについてあまり語ってはいけない。
● 劇中の主人公は和田英その人(当時は横田英)。このとき17歳。英と一緒に富岡に来て,脚気のため戦線離脱(?)を余儀なくされた河合鶴は13歳だ。
昔の人は偉かったというのは本当かもしれないなぁ。親元を離れてむしろ楽しかったのかもしれないけれど。
● 女工というと,細井和喜蔵『女工哀史』で代表されるイメージがあるが,これは大正14年に出たものだ。かつ,現代の日本人がこの本を読んで受ける印象で当時を測ってはいけないだろうし,そもそも『女工哀史』に偏りがないのかどうかも吟味される必要があるだろう。
政府や国や中央を批判するのが好きな人は古今を問わずいるわけだが,そういう人に立派な人はあまりいないと,ぼくなんぞは思ってしまっているんだけどね。今のたとえば朝日新聞のご都合主義や勉強の足りなさを重ねてしまうからかもしれないんだが。
● ぼくが高校生のとき,教師の中に,女工たちは長時間のきつい労働に耐えかねて,監視員(男性)のおめこぼしを得るために身体を差し出していた,だから朝になるとこちこちにコンドームが落ちていた,と語っている人がいた。せめてもの救いは,彼が日本史の教師ではなかったことだ。
それが富岡製糸工場のことを言っていたのか,『女工哀史』にそんなことが書いてあるのかは知らないが,これでは陰謀論を信じるのと同じ程度の頭だよな。そんなもんだったよ,昔の教師というのは。今は知らないけど。
大学(文系)なんか出るとかえってバカになるというのは,当たっているかもしれないよ。
● 主演は水島優。主題歌「あの空へ」も彼女が歌っている。
ちなみに,タイトルの「紅い襷(たすき)」というのは,工女は習熟度によって等外,三等工女,二等工女,一等工女と区分され(給金にもずいぶんと差があった),一等工女になると襷が紅になるところから。柔道の帯の色のようなものだな。
● 観客は気が滅入ってくるほどにジジイとババアばかり。鑑賞中に奇声を発するジジイもいたわ。ぼくも紛うかたなきジジイなんだけどさ。
南図書館がある雀宮までの電車賃は片道330円。そのお金と時間をかけて気が滅入ってくる場所に行くのは割に合わないかもなぁ。
Amazonプライムで見られるものはAmazonプライムで見るにとどめた方がいいのかも(この映画は,現時点ではAmazonプライムでは見られない)。
● 東図書館のは2本立てだから,わざわざ行っても元が取れる感じがするんだけども,1本だけだと以上のような感想。 それを回避するには,映画以外に用事を作ればいい。映画を見にいくついでに,本を返すとかCDを借りるとか。