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映画とは,どんな内容のものであっても,映画であるというだけでつまらないものはない,と思っていた。が,これはどうなのか。印象が輪郭を結ばない感じ。
● サロカ男爵(ジェームズ・ピュアフォイ)がいる。金満家でプラハの劇場の経済面を支援している。彼にそっぽを向かれたら,劇場は維持できない。
しかし,この男爵が猟色家で,使用人の娘に次々に手を出している。陰謀家でもある。モテるタイプではないので,陰謀の助力が必要という設定。噂は街に広まっているが,彼に逆らえる人はいない。
● そこに,好色では負けていないモーツァルト(アナイリン・バーナード)がやってきた。陰謀家である男爵とは正反対で,後先を考えないトッチャン坊やだ。よく言えば直情径行,普通に言えばバカ。
で,このクズ2人が新進ソプラノ歌手のスザンナ(モーフィッド・クラーク)を巡って対立する。
● スザンナはモーツァルトに惹かれていくのだが,その設定には無理がある。そんな女,イネーだろ。劇中のモーツァルトは売れっ子作曲家で,今で言えばアイドル的な存在になっているのだが,それにしたって恋愛対象になるような男じゃないだろ。
一方,男爵はスザンナを家に拉致して,首を締めて殺してしまう。他にも首に痣を作る女が何人もいるので,首を締めるのは男爵の趣味(?)であるらしいのだが,スザンナに対してはモーツァルトとの関係によほど腹を立てていたのだろう,絞め殺してしまった。おいおい・・・・・・
● それで男爵はどうなったかというと,死刑を執行された。ちょっと待てよ,これで死刑にできるのなら,住民がここまで彼にひれ伏していたのはおかしいだろ。
というような流れだ。映画では男爵は冷酷な悪玉で,モーツァルトは純情な善玉になっているのだが,これはどっちもどっちという感じなんだよね。
● 結局,モーツァルトをどうしたかったのだろうという疑問が残った。史実の制約を受ける話ではないのだから,いかようにでも造形できたはずだ。こういう思春期前期のニキビ兄ちゃんにしてよかったのか。
ストーリーや劇中人物の造形はどうでもよくて,18世紀の欧州の上流階級の様子を描きたかったのか。あるいは,音楽を届けようとしたのか。豪華な衣装で歌うオペラを見てくれよ,舞台は本場のオペラ劇場だよ,と。
● そういうことではないだろう。結局,よくわからない,ということだね。