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● 1962年というと,皆さんは生まれていましたか。ぼくは恥ずかしながら生まれていた。小学校に入るか入らないかくらいの年齢だ。
当時の地方の田舎少年(まだ少年になっていないか)には,この映画で描かれる世界は完全に別世界。もし,この映画を当時見ていれば,キラキラと眩しい天上の世界の話に見えたことだろう。
● しかし,当時はロンドンのイギリス情報部の空気もノンビリしたものだったらしい。時間がゆっくり流れている。インターネットやパソコンなどはあるはずもなく,そういうものを想像することすらできなかった時代でしょ。
時間がゆっくり流れることの副産物でもあろうと思うのだが,この頃のジェームズ・ボンドはやたら女性とお熱い行為に及ぶのだ。時間がゆっくり流れるって素晴らしい。
アクションシーンもない。いや,あるにはあって,当時の映画ファンはこれを見て手に汗を握ったのかもしれないが,令和の映画ファンはこれをアクションとは認めないだろう。演じる俳優も,今の方が大変だろうな。
● ボンドガールはウルスラ・アンドレス。ウィキペディア教授によると,「アンドレスは,PLAYBOY誌でヌードを披露したこともあるように,魅力的な女優で歴代のボンドガールのセクシーさを選ぶ投票でも1位に選ばれている。そのため,男優をひきつけ,亡くなる前のジェームス・ディーンや,ジャン=ポール・ベルモンド,ライアン・オニールら,多くの男優と浮名を流した」らしい。
しかし,この文章は日本語になっていないね。なぜって,これだと “PLAYBOY誌でヌードを披露する=魅力的な女優” という等式が成立してしまうからね。ジェームス・ディーンらと浮名を流したのはPLAYBOY誌でヌードを披露からだ,ということになってしまうぞ。そうじゃないんでしょうよ。
● また,この映画は,「興行的には大成功したものの,公開直後の映画評論家や映画メディアの評判はさんざんなもので,「セックスとバイオレンスに満ちた下品な映画」といった評が典型的なものだった」らしい。
これはクラシック音楽の世界でもそうで,初演の評判は散々だったというのは珍しくない。現在ではしばしば演奏される定番の作品でも,なかなか初演にこぎつけることができなかったりもした。チャイコフスキー然り,ブルックナー然り。モーツァルトだってそういう目に遭っている。
● “現代” を正しく理解するのは難しい。誰でも過去に足を引っ張られているからだ。その分野に精通している専門家もそうなのだ。
それができる人は,創作者同様に,天才と呼ばれるべきかもしれない。
● この作品のイアン・フレミングの原作はハヤカワ・ミステリ文庫で今でも読めるんだろうか。そこは確認していない。