2021年9月24日金曜日

2021.09.24 マスカレード・ナイト

TOHO CINEMAS 宇都宮

● 映画館で映画を見るのは約1年ぶり。昨年の8月4日に「コンフィデンスマンJP プリンセス編」を見て以来だ。
 コロナの影響があるかといえば,ぼくに限ってはほとんどないと思う。Amazonプライムで見るようになったから,映画館に出かけるのが億劫になった? そんなことはまったくない。
 ではなぜ? 見たい映画がなかったからだと答えますかねぇ。

● ともあれ,今日は「マスカレード・ナイト」を見に行った。「公開7日目で観客動員100万人,興行収入13.5億円を突破しており,2021年公開の邦画実写作品として,最速ペースでの動員100万人突破を記録している」らしい。
 「実写作品として」というのは,昨年10月に公開されたアニメ「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」がロングランを記録し,今年に入ってからの分だけでもかなりの興行収入を叩き出しているからだろうか。
 累計興行収入が史上初の400億円を突破し,興行収入ランキングの1位を20年ぶりに塗り替えたというのだから,これは化物的な大ヒットだ。
 人口減少過程に入っていて,かつ,この20年間はデフレが続いているにもかかわらず,興行収入の記録を替えるのはもはや異常といっていいだろう。

● ま,それはそれ。この映画を見ないわけにはいかないと思った。ぼくはけっこう長きにわたって木村拓哉のファンなのだ。
 どこに惹かれるのかというと,ストイックさが見えやすいところだろうか。あと,演技の確かさ。木村拓哉は何を演じてもキムタクになると言われるが,そういう人たちはあの演技のどこを見ているのかと思う。
 ちなみに,今までの彼の主演映画の中で最も印象に残っているのは,2017年公開の「無限の住人」。興行的にはイマイチだったようだが,あの剣劇の凄まじさといったら,比肩するものを思いつかない。

● その頃に同時進行だったSMAP解散問題。1対4になり,彼ひとりが悪役になった。楽になりたければ,4に合流してしまえばよかった。
 そうしないで1であることを貫いたのは,貫かなければならない理由があったからだろう。それが何だったのかは外野から窺うことはできなけれども,そして本人もそれを語ることはないだろうけれども,週刊誌の芸能記事が報じるところとはだいぶ違うのではなかったか。
 重大な局面で意見が割れたときに,多数派に理があることは稀であることも,確認しておきたい。

● そういうことよりも,「木村拓哉」を34年も張り続けてきたことが,今も張り続けていることが,驚異的だ。40年間サラリーマンを続けて定年を迎えたというのとは訳が違う。普通の人が「木村拓哉」をやったら3日も持つかどうか。
 その過酷といっていいであろう状況を34年も継続してきたというのが,何とも凄いな,と。しかも,その間,結婚して子供を2人,成人させているんだからね。

● 前作の「マスカレード・ホテル」は公開後すぐに見て翌日にもう一度見た。その後,テレビの地上波で放送されたのを見て,Amazonプライムでも一度見た。面白かったわけだよね。
 前作はしかし,木村拓哉ではなく長澤まさみが支えていたところが大きかった。同じ時期に撮影していた「コンフィデンスマンJP ロマンス編」のダー子とはまるで違う,真面目なホテルマン山岸尚美をキッチリと好演して,屋台骨を支えていたなという印象。

● 今回は,長澤まさみではなくて,木村拓哉が大黒柱になっている。
 ホテルスタッフや警察関係者の多くは前回と同じ顔ぶれ。石川恋も出ているよ。明石家さんまも看板になって出演。
 今回初めて登場するのは宿泊客。田中みな実,勝村政信,沢村一樹,木村佳乃,博多華丸,高岡早紀,麻生久美子。あと,宿泊客ではないけれど,石黒賢と中村アン。
 前作に出ていた生瀬勝久のような,ストーリーの本筋には絡まないながらも,強烈な存在感を飛ばす人はいなかった。

● 原作がそもそも面白いんでしょうね(読んでいないのだが)。そこに脚本や演出の巧みさが加わっているんでしょう。
 前作同様に面白かった。よどみなく,キビキビとテンポよく進行する。

● 具体的な感想を記してもいいものか。つまり,ネタバレの問題だね。
 今の時点でネタをバラしちゃまずいんですかね。たいていの人は犯人が誰かはわかっているのじゃないかと思うんだけどね。
 ひとつだけ言ってしまうと,沢村一樹がいろんなことを長澤まさみの山岸尚美に要求して,見ている側の想像(犯人は誰なのか)を撹乱してくれる。

● イマイチわからなかったのは,犯人が犯行に及んだ動機が警察に恨みを抱いていたからだというのはいいとして,だからといってなぜ若い女性2人を殺さなければいけなかったのかということだ。
 警察への恨みを晴らすのであれば,他にやり方がなかったわけでもあるまい。

● 舞台は前作と同じホテル・コルテシア東京。ロビーはセットだが,客室やエレベーターなどは日本橋蛎殻町のロイヤルパークホテルを今回も使っている。ホテルのファサードはザ コンチネンタル横浜。
 ロイヤルパークは東京に泊まるときの定宿にしていた数年間があるので,客室からの眺望には既視感があるし,2階のブライダルフロアも懐かしかった。

● 劇中のホテル・コルテシア東京は超一流ホテルという設定だが,リアルのロイヤルパークホテルはカジュアルな使い方もできる。食のレベルが高い。人形町を背負っているので,朝食の漬物やカマボコも旨い。
 東京シティエアターミナルが隣接する。羽田や成田に出るにも便利なはずだ。半蔵門線の水天宮前駅に直結。渋谷には乗換なしで行けるのだし,大手町や銀座も近い。兜町は徒歩圏内。
 隅田川がすぐそこを流れており,ゆっくりするにもいいところだが,ビジネス拠点としても使い勝手はいいだろう。もちろん,部屋にデスクは設えられている。
 ・・・・・・と書いていると,泊まりたくなってくる。コロナ以降,バッタリと行かなくなってしまったんだけど。

● 映画館もコロナの影響を受けている。人を一箇所に集めてサービスを提供する業種なのだから当然だ。
 TOHOシネマズでは(TOHOシネマズに限るまいが)コロナ対応は大きく2つ。第1は上映時間の短縮。21時までに上映を終了する。当然,レイトショーはなし。第2は使用座席を半分に制限する。コンサートなんかと同じだね。

● が,コンサートホールではこの制限を外して催行することもある。観客が向き合うことなく同じ方向を向いており,声を出さないで鑑賞するのであれば,感染対策上も座席を1つおきにする必要はない。
 映画館も同じでいいだろう。今どき,映画を見ながら大声を出す人はいないだろうしね。

● 現時点では映画館は手足を縛られた状態でプールに放り込まれたようなものだ。営業手段の選択肢を奪われていて,手を打つにも打ちようがない。
 頼みは集客力のある映画ができること。「マスカレード・ナイト」は映画館にとっても救世主になる存在だろう。

● ぼくはシニアに該当するので1,200円で見れる。相方は一般で1,800円。1年前までは “夫婦50” というのがあって,年配の夫婦は(夫婦以外のカップルも)どちらも1,200円ですんだ。その割引サービスはなくなっている。
 その代わり,水曜日に行くと安くなるサービスができたらしい。サラリーマン諸氏には関係のないことでしょうけどね。

● Amazonプライムビデオをノートパソコンの画面で見るのと,こうして映画館の大きな画面で三方からの音声に包まれながら見るのとでは,同じ見るであっても,まったく別の体験になる。
 音楽でもCDとライヴとでは,同じ聴くという体験であっても,得られる情報量にはかなりの差がある。明らかに別ものだ。
 それと同じとまで言うつもりはないが,映画館とパソコンの画面では大差がある。

● だからといって,CDに価値がないというのではない。Amazonプライムに価値がないというのではない。
 鮨と回転寿司は別ものかもしれないが,回転寿司には回転寿司の良さがある。
 ただ,いずれAmazonプライムで見られるんだからすぐに映画館で見なくてもいいや,は少し違うかもしれない。

● 映画館で見るのと同じようにAmazonプライムを見ることは,訓練してもできないだろうが,それに近づくことはできそうな気がする。パソコンの画面を大きなものに替えるといったことではなく,想像力によって。
 ただし,そのためには映画館で見ることを繰り返す必要がある。1年も離れてしまってはいけなかった。