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「人間の善悪を深くえぐる演出と豪華キャストによる究極のヒューマンドラマ」との触れこみで,実際,いい映画だと思うのだが,かすかに違和感もあって。
● 祐一(妻夫木聡)は,自分ではなく圭吾(岡田将生)の車に乗りこんだ佳乃(満島ひかり)を追尾してしまう。佳乃とは出会い系サイトで知り合って,お金を介在させている関係なのに。
自首するつもりで警察署に来たのに,光代(深津絵里)に引き留められて逃避行に走ってしまう。
要所要所で最悪の選択をしてしまう。この度し難い愚かさは何なのかという思いがまずある。
● 祐一は解体業の仕事をしている。給料はそんなにもらっていないだろう。しかし,3ナンバーの車に乗っている。
運転しているときは憂さを忘れることができたのだろうし,運転が好きでもあったのだろうが,収入と乗ってる車が不釣り合いというところで,すでに愚かさの片鱗がある。
カローラではイヤだったのだろうが,愚者の自己主張がほの見えて,これでは周囲と折合いを付けていくのは難しかろうと思わせる。こだわりは愚者の象徴だ。
● 悲劇の母は愚鈍であって,それ以外ではあり得ない。祐一は何というか,救いのない人間なのだ。救いのない人間になったのは,祐一自身に原因があるのではないと思うのだが。
光代という天使のような女性が祐一の前に現れるわけだが,これは人間が作った物語だからであって,現実世界でそんなことが起こるなんてあり得ない。
● 最後,光代の首を締めたのはどういうことなのか。光代を殺して自分も死のうとしたのか。光代が自分への思いを残さないようにするために,“悪人” を演じようとしたのか。
後者なのだろうけれども,なぜそんなことを考えたのか,よくわからない。光代への思いだけで説明するのは難しい。
● 脇を固めている俳優陣がすごい。柄本明,樹木希林,井川比佐志,余貴美子,光石研,宮崎美子。監督(李相日)のやる気が見えるようじゃないか。
音楽は久石譲が担当し,演奏は東京ニューシティ管弦楽団。主題歌は福原美穂「Your Story」。
● 明日にもAmazonプライム対象から外れてしまうので,今日のうちに見ておかなければと思って見始まったのが正直なところなのだけど,けっこう重い展開で,一気に最後まで見ることができなかった。
You Tube でJR東海のクリスマス・エクスプレスのCMを見て,気分を立て直したりした。バブル真っ盛りの1988年,深津絵里15歳のとき。