2017年10月24日火曜日

2017.10.21 宇都宮市立視聴覚ライブラリー 20世紀名画座 「ロープ」

宇都宮市立東図書館 2階集会室

● 1948年制作のアメリカ映画。監督はアルフレッド・ヒッチコック。元になった実話があるらしい。1924年に実際に起きた少年の誘拐殺人事件。
 が,ストーリーはともかく,映像としての緊張感はヒッチコックにしかできないオリジナリティに満ちたものなのでしょうね。

● 舞台はニューヨークの(日本の言葉でいえば)高層マンションの一室。最初から最後までこの部屋以外が舞台になることはない。
 登場人物も数人。それでこれだけスリリングな世界を作りあげる。

● 殺人を実行したブラントンにジョン・ドール,同じく実行者にしてピアニストのフィリップにファーリー・グレンジャー。
 彼らの事件をあばく探偵役にして,彼らの教師だったルパートに,ジェームズ・スチュワート。

● 見所はやはり最後の,ルバートがブラントンを追い詰めていくところですかね。ルバートは,デイヴィッドの帽子を見て,ブラントンがやったことを確信している。死体をどこに隠したかもわかっている。
 かつて自分が説いた超人哲学の枝葉のひとつをブラントンが実行してしまった,その非をどう咎めるか。ルバートの脳内は煮えたぎっていたはずだが。

● 冷静きわまるブラントンにしては,殺したデイヴィッドの帽子を隠しておかなかったのは凡ミス。共犯の相手にフィリップを選んでしまったのもまずかった。
 もっとも,そうでないと映画にならないでしょ,ってことになりそうだけど。

2017年10月23日月曜日

2017.10.21 宇都宮市立視聴覚ライブラリー 日本映画劇場 「三万両五十三次」

宇都宮市立東図書館 2階集会室

● 1952年の映画。原作は野村胡堂。監督は木村恵吾。65分の今の常識からすると短い映画。

● 舞台は幕末。京都の公家たちを懐柔するための資金三万両を江戸から京都まで運ぶことになった。そこで起きるドタバタを楽しむ娯楽映画。
 三万両の運搬を殿様から任されたのは,普段はパッとしない馬場蔵人(大河内傳次郎)。それに絡むのが,女盗賊のお蓮(轟夕起子),蔵人を慕う家老の娘,小百合(折原啓子),蔵人に大役をさらわれた山際三左衛門(河津清三郎)。

● 蔵人は瓢箪マニアという設定。上役から説教されているときも収集品を磨くのをやめない。それほどのマニアなのに,有事の際は瓢箪などどうでもいいかのように豹変して,修羅場に飛びこむ。
 お金には恬淡。衣食住にこだわりなし。昼行灯だけれども腕は立つ。それでもって人情家。女が放っておかない。
 当時のヒーローはこういうものだったんだね。っていうか,今でもそうか。

● この映画を支えているのはたぶん轟夕起子。妖艶で色気がある。キップが良くて,面倒見もいい。肝っ玉が大きくて,何が起きても動じない。そのくせ,蔵人に惹かれていく女っぽさ。男から見たら理想の女性だ。
 それから,お蓮一味の盗賊の牛若小僧を演じた加藤大介が絶好のスパイスになっている。

2017年7月22日土曜日

2017.07.22 宇都宮市立視聴覚ライブラリー 20世紀名画座 「砂漠の鬼将軍」

宇都宮市立東図書館 2階集会室

● 1951年のアメリカ映画。監督はヘンリー・ハサウェイ。
 第二次大戦で連合軍から「砂漠の鬼将軍」と怖れられた,ドイツのエルヴィン・ロンメルを描く。が,彼の戦場での活躍が描かれるのではなく,彼の悲劇に至るまでの経過がたどられる。
 その悲劇というのは,ヒトラー暗殺の嫌疑をかけられて反逆罪に問われ,自殺に追い込まれたこと。これは史実らしい。ただし,ロンメルが本当にヒトラー暗殺に荷担したかどうかは不明。

● ロンメルは当時としては珍しく,貴族ではなく平民というか中産階級から,元帥にまで昇りつめた人物。その過程で,ヒトラーの信頼を受け,ロンメルもまたヒトラーを崇拝していたらしいのだが。
 敗戦が濃厚になると,戦力も消耗しているし,有能な下士官も不足する。戦略の幅が限られるのだろう。これが進めば降伏する以外の選択肢がなくなる。
 そうなると,支配者の足下は震度7くらいの揺れが恒常的に続くことになる。ロンメルもまたヒトラーを除いて降伏する以外にないと考えたのかもしれない。

● ロンメルを演じたのはジェームズ・メイソン。当時のアメリカではこれが最も好かれる英雄のキャラクターだったのだろうか。
 ひと言で言うと,陰影がない人物に描かれている。一本気であり,単純であり,直情径行であり,裏表がない。要するに,懐が浅い。簡単に騙せそうな人物だ。
 これでほんとに,敵の裏をかくような作戦を敢行できたんだろうかと思う。というわけで,少し物足りなさが残った。

● ヒトラー(ルーサー・アドラー)は逆に戯画化されすぎていて,かわいそうな気がした。ここまでお粗末だったわけではないだろうに。

2017.07.22 宇都宮市立視聴覚ライブラリー 日本映画劇場 「土と兵隊」

宇都宮市立東図書館 2階集会室

● 火野葦平の原作を田坂具隆が映画化したもの。公開は1939(昭和14)年。この時期に戦争映画というと,戦意高揚のためかとまず思うんだけど,たぶん,田坂氏にその意図はないだろう。この時期はまだ,そんな必要に乏しかったのかもしれない。
 内容も戦意高揚というには,静かなものだ。人情家の玉井伍長を小杉勇が演じた。

● 2部に分かれていて,合わせて2時間の長い映画。もし,自宅でDVDを見ていたら,途中で止めたかもしれない。
 第1部は,ひたすら行軍。その様子で埋め尽くされている。兵隊さんの仕事は徒歩で移動することかと思う。
 雨やぬかるみの中を,生活用具一式と武器を背負って(あるいは手に持って)延々と歩く。

● 途中で病気になって脱落する兵士も出る。野戦病院の描写もある。当然ながら,現代の病院をイメージしてはいけない。ベッドもないし,わずかな医師はいるものの,女性の看護師なんかいやしない。
 野戦病院とは,地面に寝て休める休憩所のことだと思えばいいようだ。

● 大人数のエキストラ。これだけ贅沢にエキストラを使えるっていうのは,人間の値段が安かったんだろうな。今,これをやったらかなりの予算を要することになるのじゃないか。

● 第2部は戦闘シーンがメイン。相手は中国のゲリラ軍だろうか。トーチカから機関銃を撃ってくる。粗末な火器で戦うんだから,いきおい肉弾戦になる。
 ジリジリと敵のトーチカに近づいて,手榴弾を投げる。後ろから,援護射撃があるんだけど,これ,味方を殺すことはなかったんだろうか。オウンゴールがけっこうあったような気がするんだが。

● 敵を撃退して束の間の酒に酔う部隊に,次の命令が降る。また行軍だ。そこで映画は終わる。
 何が起こるわけでもない。静かな重厚感とでもいうものが全編を覆っている。

2017年6月13日火曜日

2017.06.10 宇都宮市民プラザ ウィークエンドシネマ 「駅馬車」

宇都宮市民プラザ 多目的ホール

● 宇都宮市民プラザの「ウィークエンドシネマ」。お邪魔するのは2回目になる。今回「駅馬車」。お客さんは95%がは爺様と婆様。ぼくもその中に混じってまったく違和感がないはずだが。
 「懐かしいわねぇ」なんて声が聞こえてくる。ぼくも学生時代に当時の名画座で見ている。が,内容はまったく記憶にない。

● 誰もが知っているアメリカの西部劇映画だから,説明は余計だろうけど,一応。監督はジョン・フォード。主演は脱獄囚のリンゴ・キッドを演じたジョン・ウェイン。
 馬車から馬に飛び乗って,さらに先頭の馬に飛び移っていく。スタントマンを使っているわけじゃないだろう。いやいや,命がけというか。
 でもないのかね。この程度のことは,運動神経に恵まれていれば,誰でもできるのかい?

● 駅馬車に乗りこんだ人たちのドラマが縦糸。それぞれ魅力的だ。
 娼婦のダラス(クレア・トレヴァー),アル中医者のブーン(トーマス・ミッチェル),御者のバック(アンディ・ディバイン),保安官のカーリー(ジョージ・バンクロフト),貴婦人という位置づけのルーシー(ルイーズ・プラット),彼女を慕う賭博師ハットフィールド(ジョン・キャラダイン),酒商人ピーコック(ドナルド・ミーク),そして銀行家のヘンリー(バートン・チャーチル)。

● ダラスの気遣いをルーシーはことごとく断る。なぜだ? 娼婦のダラスを忌避していたからだとわかったのは,最後まで見終えてからだった。
 ゲートウッドの正体も最後にわかる。

● ローズバーグに着いたあと,キッドは弟の仇である3兄弟を撃ち殺すのだが,そのシーンは最初にキッドが地面に伏せてライフルを撃つところだけ。それで彼の宿願が成就されたことが伝わってくる。
 わからないのはその後だ。ウィルコック保安官はどうしてキッドを逮捕しなかったのだ? アパッチ族との戦いで生死を共にした戦友であることはわかるし,それ以前から保安官はキッドに好感を持っていたこともわかるんだが,ここで許してしまうのは気の利かせすぎではないか。

● ま,そのおかげでキッドとダラスは連れだって,キッドの牧場に向かうことができた。クレア・トレヴァーがお得な役。ハッピーエンドで後味スッキリ。
 最後までわからなかったのは,ハットフィールドの行動だ。なぜ,駅場所に乗りこんだのか。なぜ,最後の一発になった銃弾をルーシーに向けたのか。
 ヒントになるのは,ハットフィールドがグリーンフィールド家なる名家の出かもしれなくて,ひょっとすると家同士に何かあったのかもしれない。

● インディアンを悪役にするのが許されていた時代だね。1939年だ。

2017年5月12日金曜日

2017.05.06 「テルマエ・ロマエ」「テルマエ・ロマエ Ⅱ」

● 2012年4月の封切り,Ⅱは2014の年4月。監督は武内英樹さん。主演のルシウスに阿部寛。当時,かなり話題になった。が,ぼくは見にいくことがなかった。Ⅱも同様。

● ところが,目下,“GYAO!”が無料で公開中。Ⅱは相方がネットでレンタルしていた。レンタル期限は今日の午後7時。
 ので,昨夜,“GYAO!”の無料のやつをみて,Ⅱは今日の午前中に見た。当然,パソコンで。しかも,東京のホテルにいるので,相方の小さいノートパソコンで。
 できれば,大きなスクリーンで見たいものだ。でも,これはこれで楽しめる。

● 古代ローマ帝国の浴場設計技師,ルシウスが現代日本にやってきて,日本の銭湯や温泉,アミューズメントパークのお湯のプール,ウォッシュレットなどを見て,それを古代ローマで再現するというパターン。
 その過程で発生するドタバタが面白おかしく作られる。そこに上戸彩扮する山越真実との淡い恋情を絡ませる。徹底した娯楽映画だ。

● おかしかったのは,日本の温泉などのサービスはすべて奴隷が担っているとルシウスが考えるところ。古代ローマではそれを人海戦術でやるわけだから,いやはや。
 その前に,それがどういう仕組みになっているのかと,ルシウスが推測するところも面白かった。正解に至るのは,彼が優秀な浴場設計技師だから?

● Ⅱには白木みのるが出ていた。懐かしい。大昔,子供の頃,「てなもんや三度笠」は欠かさず見ていた。日曜の夜。18時から。あの当時,18時っていうとすっかり夜だと思っていたねぇ。
 その「てなもんや三度笠」に珍念(ちんねん)が重要なキャラクターで登場していたと思うんだけど,それが白木みのる。
 ラーメン屋店主で出ていたようなんだけど,ぼくは勘違いしていたか。木桶の風呂に入って,それをルシウスに壊されて,元に戻せぇぇと叫ぶ爺様が彼だと思ったのだが。

● 主題歌はオペラから。ラッセル・ワトソン「誰も寝てはならぬ」を歌う。ほかに,劇中では「椿姫」の“乾杯の歌”も使われていた。CDで入れているわけではないだろうから,このあたりは豪勢なものだ。

● 笑いながら見て,見終えたらスカッと内容を忘れてしまう。そういう見方ができる映画でしたね。

2017年4月30日日曜日

2017.04.29 「無限の住人」

TOHO CINEMAS 宇都宮

● そうです,木村拓哉主演「無限の住人」の今日が封切り日なのですよ。今日中に観るぞ,と思っていた。
 自分はまだ観てないのにすでに観た人がいる,という日が1日でもあるのは,我慢できん。そう,今日のうちに見るのだ,ゼッテー。

● というわけで,今日最後のレイトショーにはなったけれども,観てきましたよ。「武士の一分」もそうだったし,「SPACE BATTLESHIP ヤマト」も封切日に見たんだったかな。
 
● 主演が木村拓哉となれば,ある程度の売上げは最初から見込めるというか,話題性には事欠かないから,いくつかの雑誌がこの「無限の住人」についての木村君のインタビューを記事にしている。
 それらの多くをぼくは読んでしまっていて(→たとえば,こちら),観る前から半ば観たような気分になっていた。

● 原作は沙村広明さんの同名の漫画。監督は三池崇史さん。

● この映画の特徴をいえば,全編がクライマックスの連続で,息を抜けるところがないということ。
 もうひとつは,殺陣の迫力だ。本当に斬りあっているようなリアルさ。編集だとかカット割りだとか,そういうものでこの迫力は出ないはずで,これで怪我人が出なかったとすれば,そっちの方が不思議だ。

● 特に冒頭の斬りあいは迫力満点だった。「FLIX 6月号」で木村君が「(妹の町が殺されるシーンは)本編の中では冒頭にあたるんですが,実は僕のクランクアップのシーンで。(中略)あのシーンに限っては手を決めないでやろうとなりました。“とにかくこっちは殺しに行くので,それに対して反応してください”と言われて,“分かりました”と」と語っているところだ。
 たしかに,これはそうでなければ出ないリアルさではないかと思った。

● 凜(杉咲花)が自分が死んだ万次の妹に似ていることを知って,万治にニイチャンと呼びかけるシーンが一度ならずある。
 最後の最後,死ねない身体にされたさしもの万次も息絶えそうになったとき,凜がニイチャンと言葉を絞りだす。それに対して,虫の息の万次が「それを言うならニイサマだろ・・・・・・バカッ」と答える。
 そのときの「・・・・・・バカッ」は木村拓哉にしかできない演技だったのではないか。この最後のシーンも印象的だ。

● 要するに,観る側もかなり疲れることになる。もちろん,心地よい疲れだ。
 ま,レイトショーだったので,終わったのは0時を回っていた。それも疲れを感じた理由かもしれないというオチが付くのではあるけれど。

● 杉咲花が大健闘。木村君も新たな地平を開いたという手応えを感じているのではないだろうか。
 この春一番の楽しみが,こうして終わってしまった。