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2022年5月20日金曜日

2022.05.20 宇都宮市立視聴覚ライブラリー 日本映画劇場 「祇園囃子」

宇都宮市立東図書館 2階集会室

● 1953年の公開。原作は川口松太郎の小説。
 Amazonプライムでも見られるのだが,電車賃と時間をかけて出かけていった。

● 出演は木暮実千代,若尾文子,浪花千栄子。この3人が物語を進めていく。
 浪花千栄子は小津作品の「彼岸花」で見ている。テンポのいい台詞回しが印象的だったが,ここでも早口の京都弁でまくし立てる感じが,清々しいというか。1.5倍速の京都弁なのだが,極めて明瞭で聞きやすい。
 現在88歳の若尾文子がこのとき20歳(劇中では16歳)。これだけでも見る価値があるんちゃいますか。

● 芸妓がお金のため,あるいは業界のために,好きでもない男と寝ることは是か非か。従来の規準では当然あり得べし。が,今どき(劇中の)価値観では受け入れがたい。
 結局,木暮実千代の美代春は拒み切ることができずに応じるのだが,そこで吹っ切れたような明るさを感じさせてエンディングになる。美代春にすれば,吹っ切るしかないわけでもある。

● 戦後の価値観転換の渦中において,原作者は非とするのが道徳に叶うと考えたのだろうか。今はどうかといえば,問題自体の重さが,この時代よりも軽くなっているだろう。
 処女性の価値も減じた。というか,処女という言葉があまり使われなくなった。そういうものに女性が振り回されることが減っているのであれば,今の方がいいに決っている。

● 金曜日の日中にこういう映画を見に来ることができるのは,原則,老人に限られる。無惨なほどの平均年齢。
 月に1回,連続する金・土曜日に同じ映画を上映するのだが,金曜日は土曜日よりも来場者がグッと少ない。どちらも年寄りばかりなのは同じだが。
 こうした文化事業の多くは老人福祉事業にもなっている。年寄り退屈対策事業というとさらに正確だ。ぼくも年寄りの末席を汚す者だから,これはこれでありがたいのだが・・・・・・。

2015年4月5日日曜日

2015.04.05 宇都宮市立南図書館名作映画会 「西鶴一代女」

宇都宮市立南図書館 サザンクロスホール

● 開演は13時30分。入場無料。
 監督は溝口健二。1952年の作品。原作は井原西鶴の「好色一代女」。
 田中絹代演じるお春の不幸としかいえない一生を描く。
 御所にあがっていたお春が,若党の勝之介(三船敏郎)に思いを寄せられ,駈け落ちするもうまくいくはずがなく,都を追われる。が,大名の側室にあがることになり,めでたく世継ぎをもうける。
 でも・・・・・・。父親に島原に売られたり,いろいろあって,最後は夜鷹に身を落とす。

● 最後の最後に,お春が生んだ子が大名の跡継ぎになり,お城で一緒に暮らせると喜ぶ。
 けれども,夜鷹にまで身を落としていたのをお城の重役たちが問題視し,幽閉されることになる。それを潔しとしないお春はお城を抜けだして,乞食をしながら巡礼の旅に出る。

● 貴種流離譚というのとも違う。何なのかこれは。
 純粋だけれども後先を考えない勝之助に思いを寄せられ,それを拒みきれなかったのが破綻の始まり。
 要するに,お春の不幸は彼女が美人で気立てがよかったのが原因だ。美人に生まれてしまったのが,彼女の不幸を作った。美人なら気も強くないといけないねぇ。
 美人なばっかりによけいな不幸を抱え込む女性って,今でもいるのかもしれない。女優とか局アナなんかに多いのじゃないかなぁ。

● 海外で高い評価を受け,ヴェネツィア国際映画祭で国際賞を受賞。ウィキペディアによると「田中絹代も一世一代の名演を披露」とある。
 彼女は庶民的なおかみさんが似合う顔立ちですよね。花魁姿にはちょっと違和感を覚えたんですけどね。

● 生活保護なんてのはない時代だから,落ちだすときりがない。過酷な時代ではある。これじゃ長生きはできない。
 江戸時代の風流とか雅というのが,この作品で描かれているようなものだとすると,雅の元はやせ我慢ということになる。これはよくわかる。今でもお洒落の源泉はやせ我慢だからね。ぼくはそういう我慢はしたくないけれども。