2025年10月16日木曜日

2025.10.15 リボルバー・リリー

Amazon Prime Video

● 原作はハードボイルド作家・長浦京の同名小説(例によって,ぼくは未読)。劇場公開は2023年8月。
 主演は綾瀬はるか。こうしたアクションを演じられる女優は,彼女の他には三吉彩花くらいですかねぇ。

● 共演は,長谷川博己,羽村仁成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.),阿部サダヲ,野村萬斎,豊川悦司,佐藤二朗,石橋蓮司,板尾創路,シシド・カフカ,古川琴音,清水尋也ら。緑魔子と橋爪功も。
 内田朝陽が出ていたことをエンドロールで知った。気づかなかった。が,内野朝陽と混同したわけね。

● いや,面白かったですよ。綾瀬はるかの小曾根百合が死なないで生き残るのがいい。
 舞台は大正時代なので,彼女の大正ファッションを見れるのも眼福。

● しかも,百合は玉ノ井の銘酒屋の女将という設定なので,当時の玉ノ井が再現されている。いや,再現ではないのかもしれないけれども,「抜けられます」の標識はこんなだったのかと思ったりね。
 現在の玉ノ井に当時の面影はないけれども(墨田3丁目にはラビリンスという言葉を思いださせる,クネクネした狭い路地が残っているが),またあの辺をほっつき歩いてみようかと思った。

2025年10月15日水曜日

2025.10.14 恋は雨上がりのように

Amazon Prime Video

● Amazon Prime からしばらく遠ざかってしまった。態勢を整えなければ。まず,Amazon Prime に復帰して,Amazon Prime を観るという慣性を強化しないと。
 そのためには,アイドリングが必要。すでに観ている中から,これなら間違いないというのを観て,エンジンを暖める。

● で,選んだのが8月に観たばかりの「恋は雨上がりのように」。映画の紹介サイトで「人生の雨宿りの物語」と表現しているのがあった。
 あきら(小松菜奈)が近藤(大泉洋)に向かって大きく踏み出すのは,雨が降っているとき。近藤はあきらの雨宿り先だ。「若さはときに乱暴なもので」(劇中の近藤のセリフ),雨宿り先が必要なときがある。

● 45歳の近藤も雨に降られている。妻とは離婚し,小説家への夢は絶たれ,しかし諦めきれず。離婚の原因も,近藤が夢にしがみついて,家庭を顧みなかったことが理由であることが,示唆されている。
 近藤にも雨宿りが必要だった。あきらが雨宿り先。一方通行ではない。

● 悪人がひとりも登場しない。読後感ならぬ観後感がいいのは,それも理由のひとつだと思う。

2025年10月11日土曜日

2025.10.10 第17回鹿沼市民センター名作映画祭

鹿沼市民文化センター 小ホール

● 第2回4回5回13回に続いて5回目。1日かけて「暁の脱走」「嵐を呼ぶ男」「網走番外地」「人生劇場 飛車角と吉良常」の4本を観てきた。
 昔の様式に突っ込みたいところはあるんですよ。あるんだけれども,4本とも観て良かったと思える映画でした。

● Amazon Prime でも観られるのかもしれないけれども,たとえ観られるとしても,Amazon Prime でこういう映画は観ないと思いますんでね。鹿沼まで自分の身体を運ぶしかないわけです。
 運ぶしかないんだったら,嬉々として運べた方がいいんだけれども,一番いい辛いのは早起きしなければならないこと。7時半に起きて8時前に家を出ないと1本目に間に合わない。

● 年寄りは早寝早起きだから,朝早いのは平気でしょと言うのは,ステレオタイプのものの見方しか出きやい人だぞ。年寄りといえども,人によってライフスタイルは千差万別だ。
 ぼくは深夜2時ころまでは起きているので(それでもずいぶん早く寝るようになったのだ),7時に起きるのはかなりの苦行だ。
 とりあえず間に合って1本目から観ることができた。

● 「暁の脱走」が公開されたのは1950年。戦後間もなくこういう映画が本邦でも製作されていたことにまず驚く。
 戦後,最初に復興したのは浅草の映画館だと聞いたことがある。食料より娯楽が希求される。人間にはそういうところがあるんですかね。
 
● 原作は田村泰次郎の小説「春婦伝」(の一部)。谷口千吉と黒澤明が脚本を書き,谷口千吉が監督を務めた。
 三上上等兵(池部良)と春美(山口淑子)の恋物語が経糸。では緯糸はというと,帝国陸軍の腐敗っぷり。
 ここまでひどい中間管理職は陸軍にも(たぶん)いなかったのではないかと思う。軍を悪者にして戦争のすべてのバランスを取るという,GHQの目論見がものの見事に成功した証拠と見ることもできるのじゃないかと思う。

● 晴美の一途な愛は三上にとっては疫病神。それが後半は母親と聞き分けのない息子という感じに変わっていく。
 三上はとにかく真面目。というより,世間や所属する組織の常識を絶対のものとして,それに従うことを最善としている。自分で考えることをしない。リスクをとって自分で判断し,それに従うということをしないタイプ。
 それを良しとする風潮が現在に至るまで残っていると言えるのかもしれない。ぼくもその口だったな。
 最後は,その組織の常識から脱走しようとして,2人とも命を落とす。それがエンディング。

● 山口淑子は伝説の女優の1人と言っていいと思うのだが,彼女が出演している映画を観るのは,これが初めて。
 中国語をネイティブ水準で話す。彼女は中国で李香蘭としてデビューし,女優・山口淑子は日本での2回目のデビューになるのだろう。スパイだとか何だとか、話題には事欠かなかった。
 これだけの美貌をまとってしまっ排除の不運とまとめてしまいたくなるが,美人に生まれることは本人にとって幸せなことなのなどうか,一考の余地がある。

● 「嵐を呼ぶ男」は1957年末に劇場公開された,まぁ何というのか,日本映画史の代表作の1つでしょ。石原裕次郎の存在感を決定づけた。監督は井上梅次。
 一方で,若き北原三枝の美しさも,銀幕の女優というに相応しいもの。何度も裕次郎と共演した芦川いづみも出ている。清純派という言葉が今よりもっと説得力を持っていた時代の清純派ね。

● 出演は他に,金子信雄,岡田眞澄,笈田敏夫,青山恭二,小夜福子,高野由美ら。フランキー堺も。
 舞台は当時の銀座ということになっているのだが,その頃には銀座にも生バンドが入るシャズクラブというか,ジャズキャバレーのような店があったんですか。銀座の輝度は今よりもずっと高かったんでしょうね。

● 「網走番外地」は高倉健の出世作。劇場公開は1965年4月。主題歌も高倉健が歌っていることはオールドファンなら先刻承知のことと思う。
 原作は伊藤一の同名小説。自身の網走刑務所での服役経験をもとに書かれた作品らしい。もちろん,読んだことはない。監督は石井輝男。

● 高倉健の橘と同じ房にいる受刑者(八人殺しの鬼寅)役で嵐寛寿郎が出演している。出番はそんなにないのだけれども,重要な役どころ。
 凄みがある。演技に圧があるというか。時代劇俳優で “鞍馬天狗“ と “むっつり右門” が当たり役だったということは知っているが,彼の演技を観たのはは今回が初めて。これを観れただけでも,鹿沼まで来た甲斐があったというものだ。

● 他に,南原宏治,安部徹,田中邦衛,丹波哲郎など。
 後半,橘と行動を共にする権田役の南原宏治も凄みがあったな。トロッコで山を下るシールはアクションシーンとしても後世に残るんじゃないか。
 最後はハッピーエンドと言っていい終わり方。

● 「人生劇場 飛車角と吉良常」の劇場公開は1968年10月。原作は尾崎士郎の「人生劇場 残侠編」。言うまでもないが,ぼくは読んでいない。監督は内田吐夢。
 飛車角を鶴田浩二,吉良常を辰巳柳太郎が演じる。他に,松方弘樹,若山富三郎,大木実,村井国夫,山城新伍,八名信夫,小林稔侍など。準主役級で高倉健も。

● 女優では藤純子と左幸子。飛車角の(たぶん)内縁の妻でありながら高倉健の宮川にも思いを寄せる おとよ を演じた藤純子のきれいなことと言ったら。この映画の一番の見どころはここじゃないのかね。
 あと,辰巳柳太郎の剽軽さをかもす達者な演技だろうか。

● この鹿沼市民センター名作映画祭は過去4回は大ホールだったのだが,今回は小ホールだった。小ホールだとそれなりに観客がいるという印象になる。
 ただし,ジジイとババアばっかりだ。見事にジジイとババアだけ。若者はおろか壮年層もいない。この映画祭は市の教育委員会が元締めになっているんじゃないかと思うんだけど,実質は高齢者福祉事業になっている。自治が運営する施設や行事の多くは高齢者福祉事業なんだよね。いい悪いの問題ではないのだが,往年の名画を観に来る若者はいない。

● そのジジイとババアたちだか,放映中に退出したり,始まっているところにノコノコ入ってきたりする。当然,中は暗いわけだから,階段で蹴躓く者が出る。
 何とかならんかね。始まる前に着座する。終わるまでは退出しない。その程度の時間コントロールができんかね。トイレコントロールが難しいなら尿漏れパンツを履いたらどうだ。

● これじゃ,80歳以上は入場禁止にしなくちゃいけない。そうすると,この事業じたいが成り立たなくなる。
 なかなか厄介な問題が出てきそうな予感がした。

2025年10月8日水曜日

2025.10.07 千年の愉楽

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● 原作は中上健次の同名小説。ぼくは中上作品は1冊も読んだことがない無精な人間なのだが,読んでみれば,ずっしりと重く,しかし,面白いに違いない。
 原作を変えている部分も多いようなのだが,映像化するのは難しいのだろうな,たぶん。

● 「高貴で不吉な血を持って生まれ,女たちに愉楽を与えながら命を燃やし尽くして散っていく男たち」を輩出する家系がある。早死にを宿命づけられた家系に生まれた若い男たちを,彼らのに誕生に立ち会った産婆のオリュウノオバ(寺島しのぶ)が見守る。
 オリュウノオバの夫(佐野史郎)は僧侶。生と死の祭司が夫婦という,考えようによってはふざけた設定になっている。

● 命を燃やし尽くすのは勝手だけれども,どうにもはた迷惑な男たちなんだな,これが。しかも,現代では共感を呼びにくいかもしれない。
 “草食男子” はすでに死語になるくらい,ずいぶん前に生まれた言葉だ。「女たちに愉楽を与え」るというのが,あまり男たちに訴えて来ない時代になっているような気がする。
 セックスもAIロボットで満たせる時代がすぐそこまで来ている。男たちの多くは地に足がついていないから,生とか本物とかにはこだわらない。AIロボットで何の問題もあるまいよ。

● というわけなので,家系のおどろおどろしさ,そのことによって苦しむ当事者たちの苦難が,どうもうまく伝わってこない。単なるファンタジーのように思えた。
 ファンタジーにしては少々重いな,と。現実離れしているな,と。原作で描かれた時代はずいぶんと昔なのだが。

● 若い男たちを演じるのは,高良健吾,高岡蒼佑,染谷将太の3人。男たちに関わる女たちを演じるのは,石橋杏奈,安部智凛,片山瞳,月船さらら。
 他に,井浦新,山本太郎,水上竜士,岩間天嗣ら。

● 主題歌は中村瑞希&ハシケン「うたかたのうつしよに」。劇場公開は2013年3月。

2025年10月6日月曜日

2025.10.05 森の中のレストラン

Amazon Prime Video

● 「森の奥に建つレストランを舞台に,孤独なシェフと絶望を抱える少女の出会いを描いたヒューマンドラマ」というのだが,あまりヒューマンな感じはしなかった。この世の暗い部分を寄せ集めて,これでもかというほどに暗さを強調したかったのかと思うほど。
 観終えた後にも,嫌なものを観たというザラッとした感じが残ってしまった。

● 主演の恭一を演じた船ヶ山哲の演技の物足りなさが理由の1つかも。声もくぐもっていて(それも演技なのだろうが)聞き取りにくかった。
 対照的に,ヒロインの沙耶を演じた畑芽育は素晴らしい。妻と娘を虐待する父親を演じた谷田歩も上手いなと思った。

● 恭一が自殺を図るところから始まるのだが,彼に自殺するほどの動機はない。なのに,ニ度目の自殺企図の場面まで作っているのも不可解だ。
 要するに,もう一度観たいと思う映画ではないな。基本,映画には娯楽性しか求めないぼくのような人間には,ちょっと重すぎたということにしておきたい。

● 出演者は,上記の3人の他に,森永悠希,染谷俊之,奥菜恵,佐伯日菜子。
 劇場公開は2022年11月。

2025年9月29日月曜日

2025.09.28 ママレード・ボーイ

Amazon Prime Video

● 原作は吉住渉の漫画。少女コミック誌「りぼん」に連載されたのは1990年代。
 劇場公開は2018年4月。

● 2組の夫婦がスワップ結婚するというところから話が始まる。双方に高校生の息子と娘がいて,皆で一緒に暮らし始める。
 何も起こらないわけがないという設定ですよね。

● 主演は桜井日奈子と吉沢亮。筒井道隆,檀れい,谷原章介,中山美穂が両親役。檀れいにしろ,中山美穂にしろ,つい最近までヒロイン役を張っていたと記憶しちゃってる(中山美穂は亡くなったけど)。いつの間にか時間はスルスルと過ぎて行ったんだなぁと思う。
 他に,佐藤大樹,優希美青,寺脇康文など。

● 最後のどんでん返しは途中から予想できたって人が多いんじゃないかと思う。ぼくもそうで,予想できるような展開になっているもんね。
 早とちりで余計な煩悩を抱えてしまった若者の話でもある。抱えたいから抱えたのでもある。どこかで抱えたいという気持ちがあったに違いないと思う。

● 主題歌は GReeeeN の「恋」。

2025年9月27日土曜日

2025.09.26 僕等がいた 後篇

Amazon Prime Video

● この物語は,菊田一夫の「君の名は」の系譜に属するものだろうか。恋する2人が会おうとすると,邪魔が入って会えなくなるという。
 その邪魔はもっぱら矢野(生田斗真)の側に発生するんだけど。

● 劇場公開は2012年4月21日。後篇では千見寺亜希子役で比嘉愛未が出演。
 その安希子もそうだけれども,竹内(高岡蒼甫)はほとんど神様だ。矢野と七美(吉高由里子)の間に生まれる破綻を1人で繕っている。そうして,報われない。

● この映画は,しかし,吉高由里子が支えている。吉高由里子だからという気がする。
 こういう純愛物語は,主演女優が左右するものでしょ。

● 主題歌は Mr.Children「pieces」。前篇も Mr.Children の「祈り~涙の軌道」だった。