脚本は群ようこ,音楽は大貫妙子が担当。
● 主演は小林聡美。共演が市川実日子,光石研,もたいまさこ。いつものファミリー。
他に,高橋ひとみ,伊東清矢,佐々木春樺,木南晴夏,ベンガル。
● 「東京で暮らしていたハナ(小林聡美)は,友人のトキ(市川実日子),トキの子どもトシ(佐々木春樺)と,慣れない田舎での生活を始めます。そこに中学を卒業したばかりのハナの甥アキラ(伊東清矢)が加わり,4人の新しい家族の暮らしが始まります」という設定なのだが,設定自体がファンタジーと言える。
「近くに住み何かと相談に乗ってくれるゲン(光石研)とシオリ(高橋ひとみ)の夫婦に助けられながら,少しずつ慣れていく畑仕事の毎日が続きます」というものも,あり得ない。こんなに面倒見の良い神様みたいな隣人が最初からいるなんて。
● 一番辛い立場なのはアキラ。中学を卒業したのに高校には行っていない。
自分の人生は中2で終わったと語る場面があるのだが,その理由というのがじつにつまらないもので,挫折というほどの話でもない。どうしたんだ,おまえは,と言いたくなる。
● ハナは作家かエッセイストであるらしく,夜は書きものをする。その際に万年筆やボールペンではなく鉛筆を使っているのも,この作品の風合いに合わせたものかと思われるのだが,その鉛筆は Hi-uni。
小学生のトシが使っているのは,黄色い消しゴム付きの鉛筆で,おそらく三菱鉛筆の9852ではないか。
● 悪どい人や腹にイチモツを持つような人は登場しない。気のいい善人ばかりだ。そこに猫のトムや山羊まで加わって,穏やかな田舎暮らしが理想的に描かれる。
女の園という趣もある。男が一定数を超えて存在してしまうと,フィクションでもこういう世界は描きにくくなりそうだ。
アキラもゲンもどこか女性的というか,母親に庇護されている子供のような風合いを漂わす。