2021年10月1日金曜日

2021.10.01 007は二度死ぬ

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● 007シリーズ5作目の「007は二度死ぬ(字幕版)」(1967年)。日本が舞台。
 日本がどう描かれているかは気になる。当時,日本が西洋人にどう映っていたのか,あるいは制作側が日本をどう見せたかったのか。

● ジェームズ・ボンドが日本に来てまず訪れたのは国技館。当時の横綱佐田の山が出演。ます席でちょこっと相撲を見て,ホテルに移動する。何のために国技館に来たのかはよくわからない。
 相撲を画面に入れるためなのだが,劇中での展開からは必要のないものだ。今回のボンドは時間が限られた中での任務ではあるんだけれども,けっこう暇そうなのだ。

● 次に行ったのはホテル。どこに泊まっているのかと効かれたボンドが「ヒルトン」と答えるシーンがあった。
 実際に当時のヒルトン,現在のキャピトル東急が使われていた。この地にヒルトンが開業したのは1963年だから,できて間もない頃に撮影したわけだ。

● そこで,日本でボンドをアシストするタイガー田中(丹波哲郎)と風呂に入る。湯女が何人もスタンバっている。このサービス,なかったわけじゃないよ,たしかにね。
 田中はボンドに「日本では男が先で女は後。イギリスでは違うのか」と言う。男にとっての桃源郷として,日本は描かれているわけだ。

● その昔,日本の男は世界では相手にされないが,日本の女は世界のどこへ行っても通用する,と聞いたことがあるのだが,その含意はこういうことだったのかと思った。
 これ,今でもあるのかもしれない。外国の阿呆な男たちは,日本女性は従順で自分を立ててくれると思っているのではないか。
 そこまでの阿呆はそのままにしておくしかないが,彼らも実際に日本に来てみれば,この世に桃源郷などないことを思い知るだろう。

● 今回の敵もスペクターのブロフェルド。が,日本の「大里化学工業」が関わっている。大里社長はブロフェルドの部下という設定。
 ボンドはその大里化学工業に赴くのだが,撮影に使われたのはニューオータニ。

● 東京はここまでで,次は神戸に移る。
 ボンドは田中によって日本人の格好をさせられ,忍者の訓練を受けることになる。しかも,日本女性と偽装結婚して日本人になりきって(ここのロケ地は鹿児島県坊津),敵のアジトがある島に渡る。
 これも意味がわからない。イギリスの秘密諜報員がいまさら忍者の訓練をしてどうなるのか。そんなことをしてないで,サッサと乗り込めばいいじゃないか。時間がないんだろ。しかし,そうも行かない大人の事情があったのだろう。

● ボンドは日本人っぽい顔と髪型になって(ここでのショーン・コネリーはかなり丁寧に日本人の所作を真似ていた),忍者の訓練を受けるのだ。
 柔道着の忍者や剣道着の忍者,袴をつけて日本刀を振り回す忍者など,いろんな忍者がいる。

● ボンドと偽装結婚したのがキッシー鈴木(浜美枝)。ボンドはキッシーの案内でアジトに近づくのだけれども,どういうわけかキッシーはずっと水着なのだ。昔はセパレーツと言ったんだっけな,要するにズロースビキニ。
 けれども,どう考えたって水着じゃない方が何かと動きやすいはずなのだ。
 というふうに,日本は描かれていた。今ならさすがにこういう描き方にはなるまいと思うのだが。

● ヘリコプターの戦闘シーンは迫力があった。が,この時期の「007」はアクション映画というよりも,お色気ありのコミカルありの,ときにバカバカしさありの,大人の総合娯楽映画といった色合いが濃いように思える。

● 今回のボンドガールは浜美枝の他に若林映子。ショーン・コネリーとの見た目の相性は若林映子の方がいいような気がした。
 若林が演じるアキが殺されて間もないのに,ボンドはキッシーとイチャイチャ始めるわけだ。ちょっとは喪に服せよ。そういう映画だってのはわかるんだけどさ。

● 丹波哲郎もこの頃は若かった。半世紀以上も昔なんだからね。
 駆けだしのチンピラ感もちょっとある。今で言うと佐藤健のような。ま,佐藤健とは違うんだけどさ。

● 丹波哲郎も若林映子も浜美枝も流暢に英語を喋るのだが,吹き替えているかな。どうだろ。
 丹波哲郎がここまで英語を操るとはちょっと思えないな。喋るとしてもカタカナ英語だろうという決めつけを持ってしまいがちだよ。