2021年9月18日土曜日

2021.09.18 日本の夜 女・女・女物語

 Amazonプライムビデオ


● Amazonプライムにはこんなのもあった。「日本の夜 女・女・女物語」(1963年)。太平洋戦争に負けて18年目。この年に生まれた人は58歳になっている。諸行無常。少年老い易く学成り難し。
 人はまことにパンのみにて生くるにあらず。貧しいから娯楽はなかったかといえば,決してそうではない。戦後,最初に復興したのは浅草の映画館だったと聞く。娯楽,遊び,猥雑なるものを求めるのは,人間のほとんど本能であって,食うや食わずでも遊びたいのが人間なのでしょう。

● 当然,夜の世界に生きる女たちのルポルタージュだと思うでしょう。ぼくもそう思って見始めたんだけども,恐山のイタコが登場したり,大阪は釜ヶ崎の物騒な騒ぎを映したり,尼になる女性の得度式の様子を映したり,最後は尼たちが大勢托鉢に出るシーンを流したり,どうも何をしないのかよくわからない。
 途中から社会糾弾的なものになってしまう。この時代の女をからかっているようにも見える。
 夜の女と貧困は切り離せない関係にあるのだとしても,そこだけに焦点を絞ってしまうと,薄っぺらなものになる。

● ルポルタージュではなくて,過半は作られた映像だ。大きく見れば,この時代の世相の一部を切り取った記録でもあるのだろうけれども,厳密にいえばフィクションまみれになっていて,この映像を見せてこの時代はこうでしたと言ってしまうのは,ちょっと違うような気がする。
 「女性は,男性にとって永遠の謎であり,永遠の憧れである―。盗み撮りを駆使し,ドキュメンタリーの効果を最高度に上げるよう狙ったもの」というんだけど,その線に添って良く言えば先導・編集されており,悪く言えば現実を歪めてしまっているのではないかと思う。

● 唯一,間違いないのは,女性の外見が今とはずいぶん違うということだ。当時の17歳の娘は今だと30ちょい前くらいの年齢に見える。
 体型はずんぐりしている。胸は小さくても,腹から背中までの厚さはかなりある。
 顔立ちも,総じて第1次産業顔だ。農村顔というか垢抜けないというか。当時は都市に住んでいる日本人もそういう顔だったようだ。もちろん,女性だけのはずがない。男性も同じだった。

● 監督は武智鉄二。